脳卒中とは~脳の血管の病気(脳血管疾患)の総称


脳卒中」とは、がん・心臓病(心疾患)・肺炎に次いで日本人の死因として4番目に位置する「脳血管疾患(障害)」の別名で、一般的にはこのほうがよく知られた呼び名です(以下、「脳卒中」と呼称)。

男女別では、女性のほうがやや上回る傾向にあります(性別にみた死因順位別 死亡数・死亡率 (厚生労働省))


脳血管疾患の中には、事前の突発的な発作を伴わない無症候性のものもあるため、厳密には脳卒中は「脳血管障害の一症例」とされています。


日本で昔から多かったこの脳卒中は、いまやその死亡数こそ減少してきているものの、発症数や総患者数において死亡原因第一位の「がん」より多いとされ、決して過去の病気というわけではありません。

医師から「脳卒中」と言われたことがある者の割合は男性5.7%・女性3.3%で(平成22年現在)、10年前に比べると男女とも増加傾向にあります。


脳卒中の推定患者数はおよそ300万人超に達するとされ、高齢者が要介護・寝たきりになる最大の原因とされる病気です。

(ちなみに最新の研究によれば、世界的にも若年層の脳卒中の新規発症割合が増える傾向にあり、若い方も高齢者だけの病気と油断しないほうがよさそうです。 脳卒中、若年層も増加 新規発症6割が74歳以下(47NEWS)


脳卒中を大きく分けると、「脳の血管が詰まるタイプ」(脳梗塞〔脳こうそく〕など)と、「脳の血管や脳動脈のこぶが、破れて出血するタイプ」(脳出血・くも膜下出血など)の二つに分かれます。


ちなみに、脳卒中のなかでもっとも多い(全体の約7割)のは「脳梗塞」となっています(「脳梗塞の前兆と症状~予防・治療の概要を知る」)。

高齢者の認知症の3割が、脳卒中による「脳血管性認知症」と言われます。


脳卒中はある日突然に発症し、また再発しやすい特徴を持つ病気です。

再発率は年間およそ2~3%程度ともいわれており、特に発症後1年程度は、十分に気をつける必要があるとされます。


年齢が高くなるほど血管の痛みが進むことから、65歳以上の高齢者における脳卒中の発症率は、若年層に比べ高くなっています。


脳卒中は脳にかかわるさまざまな病気・病名を総称したものですが、「脳の血管が詰まる」か「脳の血管が破れる」ことによって、脳組織が壊死(えし)するという点において共通しています。


脳出血は、高血圧や加齢などにより脳の血管が長い時間をかけてもろくなった結果、脳の細い血管がやぶれて出血するものです。


出血が固まると「血腫」となり、周囲の脳細胞にもダメージを与えます。


脳をおおっている「くも膜」の下部の血管、特に血管がふくらんだ「脳動脈瘤」が破裂して出血するのが「くも膜下出血」です。

突発的な激しい頭痛が前触れとして多く出ますが、放置するとやがて本格的な「くも膜下出血」を起こすことになります。

早期診断・治療が分けるその後の運命



脳卒中は最終的に症状が重篤化するケースもあれば、ある日突然重いダメージを発症するケースもあります。


脳のどの機能をつかさどる部分で、血管が詰まったり破れて出血したか」という発生原因でも、異なってきます。


つい昨日まで大丈夫だったにもかかわらず、顔面や脚の麻痺(まひ)、感覚の障害、筋力低下、舌の麻痺による失語状態、相手の話が理解できない、うまく言葉が話せないなど症状の現れ方も様々で、軽い発作が起きた後、時間をかけて幾度かの発作を繰り返したあとに、上記のような症状を突然に呈します。

また、突然激しい頭痛がしたり、吐き気にみまわれることなどもあります。

視力に障害が現れたり、めまいがしたり、平衡感覚を失って転倒することもあります。


発症直後に脳の機能が大きく損なわれる症例もあれば、いったん症状がおさまり、その後の数日で徐々に機能が損なわれていく場合もあります。


上記のような症状が出た場合、仮におさまったからといって放置することが最も危険です。

直ちに病院に直行して、専門医の診察を受ける必要があります。


かつて「脳卒中が起きたら動かさずに安静にしていること」と言われた時代もありましたが、現在の医学常識ではこれは大間違いで、一刻も早く専門の医療機関に搬送し、正確な診断と治療を受ける必要があるとされています。


脳卒中の治療は、以下にも記すように「時間との勝負」といった側面があり、高度な医療機器と専門医を配した病院でなければ対応できない症例も多いため、患者側としてはお住まいの地域の脳血管疾患専門医療機関がどこにあって、どれくらいの時間でたどり着けるかなどの情報を、日頃からチェックしておくようにしたいものです。


たとえば脳梗塞の場合、脳血管内にできた血の固まり(血栓)を溶かす目的で「tPA」という薬の投与を行うことがありますが、「tPA」は発症から4時間半以内に投薬しなければならないという時間的制約があります。

また脳出血の一症例で脳の内部で出血する「脳内出血」においては、脳内にたまった血液があまりに大きくなったときなど、それを取り除くための手術を早急に行う必要があります。


このような場合などは、対応の遅れが一命に関わるだけでなく、深刻な後遺症が残る可能性もあります。

出血が長時間続いたり、あるいは血管の詰まりによる酸素不足などで脳にダメージが生じると、程度の差こそあれ、言語障害や下半身まひなどの後遺症が残る可能性が高まります。

後日のリハビリによる回復を目指すにしても、早期の治療対応ができたかどうかで、リハビリに費やす時間・月日が大きく異なってきます。


ちなみに脳卒中のリハビリに関しては、今日ではたとえ脳細胞が損傷しても、周囲の細胞がある程度その機能を代行できることがわかっています。

リハビリによる運動機能の活用・活性化により、新たな神経の伝達回路が構築されるというものです。


このリハビリによる改善効果は、一般には「発症から半年程度」とされますが、最近は新たな治療法の研究も進んでおり、まひから数年程度経過している患者でも一定の改善効果が見られたという実証例も増えています。今後の進展に期待したいところです。


いずれにせよ、脳卒中はその発生原因や、治療時点でどのような症状を呈しているかで、治療の方針がまったく異なってくるため、病院でMRI脳血管造影などの検査をしてみないとわからない面が多くあります。


したがって、上に述べたような症状が見られたときはまさに一刻を争う事態と考え、ただちに専門医の診察を受ける必要があることを、心に留めておいてください。



脳卒中の予防は、生活習慣病対策にも



脳卒中の最大の危険因子は「高血圧」というのが、現在では一般的な考え方となっています。


次いで、動脈硬化・糖尿病・心房細動(不整脈)・脂質異常症(高脂血症)などが、危険因子として指摘されています。


喫煙や過度の飲酒・運動不足・ストレスなどにかかわる、いわゆる生活習慣病を引き起こす危険因子が多くなる生活を避けることが、すなわち脳卒中の予防にもつながることを、おぼえておきたいものです。


たとえば、「肥満が脳卒中の危険因子である」といった統一見解は、実はまだ確立されているわけではありません。

「肥満は脳卒中とは関係がない」とする説もありますし、また時代によって新しい研究結果や実験結果が発表され、危険要因の重要度が変わってくる…という面は、確かにあります。


しかしながら、かりに高血圧が脳卒中においてもっとも警戒すべきとわかっているにせよ、私たちはしょせん、「高血圧だけ」に対する予防手段をとることなどは出来ません。


また必ずしも薬やサプリを飲めばよいというものでもないですし(たとえば脳塞栓のように高血圧との関係が薄い疾患もありますし、逆に降圧剤を服用してはならない場合もあります)、脳卒中といってもさまざまなタイプの脳疾患を含んでいますので、特定の予防策が「脳卒中全般の予防」に対して有効に作用するとは言えないからです。


高血圧や動脈硬化、糖尿病を引き起こす要因となる生活習慣の乱れを改め、生活習慣病の予防を心がけることが、ごく普通の日常を送る私たちにとって最善の脳卒中予防となります。


これはさらにメタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)対策も兼ねることになるため、まさしく一石二鳥といえるのではないでしょうか。

脳卒中対策のポイント



最後に、具体的な脳卒中予防のポイント(すなわち、生活習慣病対策にもなります)として、いくつかあげておきます。



・現在、高血圧や不整脈の方は、まずはその治療に努めること。


・健診でメタボリック・シンドロームに該当すると診断された方は、食事(内容と回数・時期)を見直す
そうして生活習慣上の危険因子を減らしていくこと。



すなわち食事においては、塩分・脂肪・コレステロールの過度の摂取を控えるようにする。

自分の体力にあった適度な有酸素運動(ジョギング・自転車等)と休息をとり、ストレスや不規則な生活リズム等をできるだけ避けるように心がける。


・なにかとツライ勤め人の方も多いでしょうが、なんとか節酒と禁煙を!


過度の飲酒は、脳梗塞の発症率の増加と正比例の関係にあるという研究結果があります。

また喫煙は脳梗塞の発症リスクを2~4倍程度高める危険因子であることは、すでに専門家の見解としても確立されています。


・生活習慣の見直しにちなんで、夏の脱水症状冬場の寒さなどにも注意。


特に夜中は脱水症状になりやすく、脳梗塞の遠因として指摘する声があります。寝る前にコップ一杯の水分補給を。

また寒いと血圧が上がるため、冬のお風呂には注意
冷えた体でいきなり熱いお湯に飛び込むのは厳禁、また脱衣所やお風呂も事前によく温めておきましょう。


以上の内容をまとめた脳卒中対策のスローガン一増・四減・一禁』を、おぼえておきましょう。

一増』は「有酸素運動」を増やすこと、『四減』は「体重」「アルコール」「塩分」「動物性脂肪」を減らすこと、そして『一禁』は「禁煙」を指します。



脳卒中予のための対策は、身近なところからいつでも始めることができます。


加齢による血管の老化など、自分ではどうにもならない要因も確かにあるのですが、一方で効果的な予防によって、脳卒中の発症につながる危険因子を減らしていけることもまた確かです。


世界にひとつしかない、自分の脳と身体を守るためです。

関心を高く持って、まずは出来ることから実行に移していきたいものですね。



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